この記事で分かること
- 57歳・住宅ローンを抱えたまま個人事業主として独立した元システム責任者が、退職金の大半をインデックス投資に振り向けた理由
- チャールズ・エリスの名著『敗者のゲーム』が教える、個人投資家が市場で生き残るための唯一とも言える戦略
- 「住宅ローン金利2.3%」と「インデックス投資の期待リターン7%」という金利差から導いた、リスクを取る根拠
- SPIVA(S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の公式調査)が示す、プロのアクティブファンドがインデックスに勝てない客観的データ
この記事を書いている人
- SEとして中規模システム開発会社に5年勤務、私立大学のシステム管理部門に25年在籍し、後半は部門責任者を務める
- 2026年1月1日、57歳で個人事業主として開業。住宅ローンを抱えながら、退職金の大半をインデックス投資に振り向けている当事者
- 2024年12月の旧NISA時代から『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』への投資を継続中。現在の損益は+20%を維持
導入:57歳、住宅ローンを抱えたまま「大胆な賭け」に出た理由
2026年、組織という安全地帯を飛び出し、57歳で個人事業主として開業した私。これからの人生を自分の腕一本でサバイバルしていく上で、避けて通れない現実が「老後のお金」と「資産形成」でした。
現在、私は退職金のほとんどを『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』などのインデックスファンドに投じ、あとは「ほったらかす」という運用を行っています。2024年12月の旧NISA時代からスタートし、現在の損益は+20%を維持しています。
57歳、しかも住宅ローンを抱えた身で、なぜこれほど大胆な決断ができたのか。
その答えは、投資の呪縛を解き、私に「市場の冷徹な現実」を突きつけてくれた一冊の名著、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』にあります。今回は、元SEとしての視点と、実際に身銭を切っている当事者の生々しい実感を交えながら、この本が教えてくれた生存戦略を語ります。
『敗者のゲーム』が暴く市場の現実——なぜ「勝とうとする人」から脱落するのか
著者のチャールズ・エリスは、現代の株式市場を「プロが互いに足を引っ張り合う、ミス主導のテニス試合」に例えます。
アマチュアのテニス試合では、素晴らしいスマッシュで点を取る(勝者のゲーム)のではなく、相手が勝手にミスをするのを待つ(敗者のゲーム)ほうが結果的に勝ち残ります。現在の株式市場もこれと全く同じ構造だ、というのが本書の指摘です。
市場の9割以上をプロ(機関投資家)が占める現代、誰もがAIや最新システムを駆使して同じ情報にアクセスしています。つまり、「誰も市場平均を出し抜くことなど、継続的にはできない」というのが冷徹な現実なのです。
本書が突きつける結論を私なりに要約すると、こうなります。市場に勝とうと売買を繰り返すのをやめ、市場全体を丸ごと保有して動かない——それこそが、個人投資家が現実的に取れる、最も合理的な戦略だということです。
この主張は感覚論ではなく、データでも裏付けられている
「本当にプロは市場に勝てないのか」と疑問に思う方もいるでしょう。ここは感覚論で終わらせず、客観的なデータで確認しておきます。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が定期的に公表しているSPIVA(S&P Indices Versus Active)という調査があります。世界中のアクティブファンドと、対応する指数(インデックス)の運用成績を、手数料控除後の実質リターンで比較し続けている、20年以上の歴史を持つ調査です。
このSPIVAのデータでは、投資期間が10年を超える長期になるほど、8〜9割以上のアクティブファンドがインデックスに負けているという結果が繰り返し示されています。これは1年や2年の短期的な話ではなく、長期で見たときに一貫して観測されている傾向です。
プロが本気で銘柄を選び、日々分析を重ねてもなお、多くの場合は「何もせず指数を持ち続けるだけ」のインデックス投資に勝てない。この構造そのものが、『敗者のゲーム』の主張を数字で裏付けています。
元SEの私が「これ以上ないほど納得した」経済のロジック
最初、この本のタイトルを見たときは、「敗者のゲームなんて、何かネガティブな話なのかな」と思ってしまいました。しかし読み進めるうちに、これが最高の比喩であると気づかされます。これは、激しい市場で確実に「勝ち残る」ための、極めて合理的な設計図なのです。
本書はアメリカ市場をベースにしていますが、現代の市場も、凹凸を繰り返しながら見事な右肩上がりを続けています。経済のバイタリティというのは本当にすごいものです。考えてみれば、その時代に合わせて文明は常に発展し続け、そこには人々の期待が溢れ、応援する意味も含めて投資が盛んになる。だからこそ、経済全体が長期的に衰え続けることは考えにくいのです。
であるならば、「その発展の全体(市場丸ごと)に投資しておけばよい」というのは、元システム責任者として見ても、これ以上なくロジカルで納得のいく「バグの少ないシステム」でした。個別の銘柄というバグを一つずつ探すより、市場全体という枯れたアーキテクチャに乗る——そう捉えると、エンジニア出身の私には驚くほどしっくりきたのです。
住宅ローンを抱えながら踏み切れた、本当の理由——「金利差」という一点
ここからは、ネットの書評ではあまり語られていない、私自身の意思決定の核心部分をお話しします。
「住宅ローンを抱えているのに、なぜ退職金を投資に回せるのか」と思われる方も多いはずです。この決断の背景には、感覚ではなく一つの明確な数字の比較がありました。
私の住宅ローンの金利は2.3%です。一方、全米株式市場に連動するインデックス投資の長期的な年率リターンの実績値は、歴史的に見て7%前後とされています。
つまり、「2.3%の借金を急いで返す」ことと、「7%前後のリターンが期待できる市場に資金を置いておく」ことを比較すると、理屈の上では後者のほうが資産全体の成長には合理的だ、という判断です。これはファイナンスの世界では「イールドギャップ(金利差)」と呼ばれる考え方に近く、住宅ローンという低金利の負債を抱えたまま資産運用を行う人が実際に採用している戦略でもあります。
もちろん、これは元本保証のない話です。市場が大暴落し、必要なタイミングで含み損を抱えたまま資産を取り崩さざるを得なくなるリスクも、当然あります。それでも私がこの選択をしたのは、そのリスクを引き受けるからこそ得られる「リスクプレミアム」の存在を信じているからです。何もリスクを取らない人には、市場は超過リターンを支払ってくれません。
ネットのリアルな声と、私が実際に行動に移したこと
ネットの書評などを見ると、「1980年代のアメリカのデータがベースのため、現代日本のNISA制度で『具体的にどの銘柄をいくら買えばいいか』という実務的な答えまでは得られない」という惜しむ声も一定数あります。
確かにその通りです。この本は「投資のマインドを整える聖書」であって、具体的なボタンの押し方までは教えてくれません。
だからこそ私は、この本で「長期・分散・低コスト」が正解であるという確信(腹)を得た上で、自分で現実的な行動を起こしました。それが、SBI証券でのNISA口座開設と、『eMAXIS Slim(S&P500)』への一極集中・ほったらかし運用という選択です。
本書には「相場が良い数日間を逃すだけでリターンが激減する」という趣旨の指摘があります。この考え方を信じ、私は今、市場という大きな流れの中に退職金を投じて、静かに佇んでいます。
もしあなたが同じ決断に迷っているなら
もしあなたが、「これからNISAを始めたいけれど、暴落が怖くて一歩が踏み出せない」「どの投資信託を選べばいいか分からない」と悩んでいるなら、まずは市場の全体像を味方につける環境を整えることが最優先です。
プロの投資家たちが血眼になって奪い合っている市場の利益を、私たちは「ただ口座を開いて、自動積み立てを設定するだけ」で、彼らと同じ、あるいはそれ以上の成果(市場平均)を、ほぼノーコストに近い形で手に入れることができます。これは精神論ではなく、SPIVAのデータが示す通り、プロの多数派でさえ実現できていない成果です。
結び:50代後半からのサバイバルは、正しい知識で武装できる
50代後半からのサバイバル。甘い世界ではありません。住宅ローンという負債を抱えたまま大きな決断をすることに、不安がないと言えば嘘になります。
ですが、感覚や勢いではなく、金利差という一点の数字と、SPIVAという客観的なデータ、そして『敗者のゲーム』という一冊の名著から得た確信を積み重ねれば、夜安心して眠りながら資産を育てることは十分に可能です。
私と一緒に、現実的な一歩を踏み出してみませんか。

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