「家を買ったから辞められない」と言っていた同僚たちへ。57歳の私が、住宅ローンを抱えたまま資産形成に賭けた理由

目次

この記事で分かること

  • 57歳・元システム責任者が、住宅ローンを抱えたまま「繰り上げ返済」ではなく「資産運用」を選んだ理由と、その判断プロセス
  • 「退職金で住宅ローンを一括返済する」か「資産運用に回す」か、判断の分かれ目となる考え方
  • 「借り換え」を実際に検討した上で見送った、手数料と手間の実体験
  • 試算の前提となる「自分の退職金の見込み額」を、どこでどう確認すればよいか
  • 自分自身の数字で判断するための、シンプルな思考の枠組み

この記事を書いている人

  • SEとして中規模システム開発会社に5年勤務、私立大学のシステム管理部門に25年在籍し、後半は部門責任者を務める
  • 2026年1月1日、57歳で個人事業主として開業。住宅ローンを抱えたまま、退職金の多くをインデックス投資に振り向けている当事者

この記事の要点(結論・根拠・実践方法)

  • 結論:住宅ローンを「繰り上げ返済」「借り換え」「資産運用」のどれに充てるかは、自分の金利・残債・期待リターンを数字で比較して決めるべきで、感覚で判断しないこと
  • 根拠:住宅ローン金利とインデックス投資の期待リターンの差(イールドギャップ)、借り換えの手数料と軽減効果、繰り上げ返済の利息軽減効果は、いずれも自分の数字を当てはめないと判断できない
  • 実践チェックリスト
  • [ ] 自分の住宅ローンの金利と残債、残りの返済期間を確認する
  • [ ] 借り換えた場合の金利差による軽減額と、手数料・手続きの手間を比較する
  • [ ] 自分の退職金の見込み額を、就業規則や総務部門に確認する

※本記事はシムエイジングの「資産形成シリーズ・完全ガイド」の一部です。

「家を買ったから、辞められないんだよね」

前職にいた頃、複数の同僚が、ふとした雑談でこんなことを口にしていました。

「うちは家を買っちゃったから、簡単には辞められないよ」

戸建てやマンションを購入し、数十年の住宅ローンを組んだ以上、毎月決まった給与が振り込まれる会社員という立場を手放すのが怖い——その気持ちは、痛いほどよく分かります。私自身も住宅ローンを抱えたまま、57歳で組織を離れるという決断をした人間だからです。

正直に言えば、私も同じように「ローンがあるから無理はできない」と考えることもできました。しかし、私が選んだのは、繰り上げ返済でローンを圧縮することではなく、退職金の多くをインデックス投資に振り向けるという選択でした。今回は、なぜその判断ができたのか、当事者としての計算のプロセスをお話しします。

「繰り上げ返済 vs 資産運用」は、多くの人が退職前後に必ず悩むテーマ

このテーマは、決して私だけの特殊な悩みではありません。銀行や金融機関のコラムでも繰り返し取り上げられる、定番の論点です。基本的な判断軸はシンプルで、次のように整理できます。

  • 住宅ローンの金利が高く、投資の期待リターンに自信が持てないなら → 繰り上げ返済で利息負担を減らすほうが手堅い
  • 住宅ローンの金利が低く、長期的な投資の期待リターンがそれを上回ると考えられるなら → 資産運用に回したほうが、資産全体の成長という意味では合理的になりうる

金融機関のコラムでもよく指摘される通り、繰り上げ返済の効果は「金利」「残債」「残りの返済期間」で決まります。金利が低い状態では、繰り上げ返済による利息軽減効果はそれほど大きくならない、という点は覚えておく価値があります。

私が実際に計算した数字

以前このブログでも触れましたが、私の住宅ローンの金利は2.3%です。一方、全米株式市場に連動するインデックス投資の長期的な年率リターンの実績値は、歴史的に見て7%前後とされています。

つまり、「2.3%の借金を急いで減らす」ことと、「7%前後のリターンが期待できる市場に資金を置いておく」ことを比較すると、理屈の上では後者のほうが資産全体の成長には合理的だ、という判断です。これは金融の世界で「イールドギャップ(金利差)」と呼ばれる考え方に近く、低金利の住宅ローンを抱えたまま資産運用を行う人が、実際に採用している考え方の一つです。

もちろん、これは元本保証のない話です。市場が大暴落し、含み損を抱えたまま資産を取り崩さざるを得なくなるリスクは当然あります。それでも私がこの選択をしたのは、そのリスクを引き受けるからこそ得られる「リスクプレミアム」の存在を信じているからです。何もリスクを取らない人には、市場は超過リターンを支払ってくれません。

「借り換え」も検討しました。それでも見送った理由

住宅ローンの返済期間中、ほぼ誰もが一度は耳にする言葉に「借り換え」があります。私も例外ではなく、実際に銀行へ話を聞きに行きました。

結論から言うと、私は借り換えを見送りました。理由は、残債に対して一定の割合でかかる手数料にあります。実際に試算してみると、確かに適用される金利自体は下がるのですが、残債に対する手数料を加味すると、トータルでのメリットはそれほど大きくならないという結果になりました。加えて、審査に必要な資料集めや手続きにかかる時間を考えると、その労力に見合うほどの効果は得られないと判断し、見送ることにしました。

もし、その時点で残債がもっと少なかったり、金利差がもっと大きかったりすれば、違う結論になっていたかもしれません。ここは、借り換えを検討する時点での残債の額と、現在の金利と借り換え先の金利差によって、結論が変わる部分です。

「繰り上げ返済」「借り換え」「資産運用」——この3つを並べて初めて、住宅ローンを抱える人が検討すべき選択肢が揃います。私の場合は、借り換えは手数料と手間の割に効果が限定的、繰り上げ返済は低金利ゆえに利息軽減効果が薄い、という判断から、最終的にインデックス投資を選びました。

その前提として、自分の退職金がいくらになるかを知っておく

ここまでの話は、すべて「手元にいくら資金があるか」が分かって初めて成り立つ試算です。ところが、いざ計算しようとすると、自分の退職金がいくらになるのか、意外と把握していない人が多いのではないでしょうか。

退職金の計算式は、多くの場合、会社の就業規則(退職金規程)に定められています。人事や総務など所轄の部署に確認すれば、正確な金額や計算方法を教えてもらえるはずです。

「そんなことを聞いたら、辞める噂が立つのでは」と心配される方もいるかもしれません。その気持ちはよく分かります。ですが私は、「退職後のことを考えないまま歳を重ねるほうが、よほど危うい」と思っています。ちなみに私自身は、実際に所轄の部署へ確認し、きちんと教えてもらえました。まずは自分の退職金の見込み額を把握するところから、すべての試算が始まります。

あなたの数字で、同じ計算をしてみてほしい

ここで大事なのは、「だから繰り上げ返済せず投資すべきだ」と一般化することではありません。判断の材料になるのは、あくまで自分自身の数字です。

  • 自分の住宅ローンの金利は、何%か
  • 残りの返済期間は、あと何年か
  • 借り換えを検討する場合、金利差から見込める軽減額と、残債にかかる手数料・手続きの手間を比較してどうか
  • 繰り上げ返済に回せる資金を、投資に回した場合の期待リターンをどう見積もるか
  • そのリスクを、自分は許容できるか

この4つを、自分の状況に当てはめて考えてみるだけでも、「なんとなく怖いから繰り上げ返済しておこう」という判断から、「自分の数字で選んだ」という納得感のある判断に変わるはずです。金利差だけで単純に判断できるものではなく、団体信用生命保険の保障が減額される点など、繰り上げ返済ならではのメリットも存在します。両方の性質を理解した上で、自分の家庭にとってのバランスを見つけることが大切です。

まとめ:ローンがあるから諦めるのではなく、数字で選ぶ

「家を買ったから辞められない」という同僚たちの言葉は、決して間違っていません。住宅ローンという大きな負債を抱えたまま、大きな決断をするのは誰でも怖いものです。

ですが、「怖いから動かない」のと、「計算した上で、あえて動かない、あるいは動く」のとでは、納得感がまったく違います。もし今、住宅ローンを抱えながら「このままでいいのか」と感じている方がいれば、一度、ご自身の金利と、退職金や貯蓄の使い道について、数字で整理してみることをおすすめします。複数の住宅ローンや借り換えプランを一括で比較できるサービスを使えば、自分の金利が今どのくらいの水準にあるのかを客観的に把握するところから始められます。

キャッシュをすべてローン返済に使い切ってしまうのではなく、資産運用や、自分自身・家族への投資に回すという選択肢も、ぜひ一度検討してみてください。


今日からの一歩

  • まずは自分の退職金の見込み額を、就業規則や総務部門に確認してみましょう
  • 住宅ローンの金利が今の市場水準と比べてどうか気になる方は、[住宅ローン比較サービス]で一度チェックしてみるのも一つの手です
  • 資産運用の考え方についてもっと知りたい方は、『敗者のゲーム』の記事はこちら

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